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オーバーホールは「新品に戻す」ことではありません。

修理を担当してくださっている職人さんとの話の中で、
「そういえばオーバーホールって新品になるって思っている人多くないですか?」と聞くと、
「多分9割以上の人がそう思っているかも」そういった回答をされたので、
今回はオーバーホールについて書いてみます。

時計は何度も書いていますが「定期的にオーバーホールが必要」です。
これは構造上「必ず必要」です。
時計によってスパンは変わりますのであくまで目安で3年~5年に1度。
「○○は何年は修理不要」という細かいことは省きます。
要は3年くらいで出せば機械の油切れが防げるのでパーツが摩耗しにくい、
遅くても5年は機械油が乾くのでパーツが摩耗しやすい。
つまり新鮮な「機械油」というのが非常に重要です。

ではオーバーホールの作業内容はザっと説明すると、
・機械をケースから取り出す
・機械をバラす
・パーツを洗浄する
・必要なパーツ交換の判断を行い必要であればパーツを手配する
・各パーツに適正な機械油を差す
・パーツを組む
・調整を行う
・ケースに組む
・最終チェック

時計や作業によってさらに外装のパーツなどにも手を加えるので、
工程はさらに増えますが大まかなところはこんなところ。
で、今回のオーバーホールは新品に戻すことでないというのは、
当たり前ですが時計を使い続ける上で必要なパーツ交換は行いますが、
使えるパーツはそのまま使いますので、
「現時点で適正に動かすことができる状態にする」
これがオーバーホールと言えます。

そうなるとオーバーホールを行った後に当然交換を行っていない古いパーツは摩耗します。
でもそれがいつ、どのタイミングで摩耗するのかはわかりませんので、
不具合が出た場合はその都度対処します。
そうなると修理依頼された方はオーバーホールは新品になると思っているだろうから、
トラブルと怒りますよね。
でもそれはちょっとした認識の違いだと思うのです。

しかしブランド時計のメーカー修理を依頼するとかなり高額。
それで不具合が出ればクレームもの。
それもあってか今のブランドの修理は安価なライン(とは言っても300万円以下くらい)は、
「機械をそっくり入れ替える」のです。
つまり機械を新品?(詳しくは書けません)に交換します。
それでも不具合は出るのですが、
一部はオーバーホールをするかもしれませんが大体はしません。

じゃ機械を入れ替えたら安心かというとそうでもない。
ここまではあくまで「機械」だけの話。
防水時計(ダイバーズは特に)外装パーツも必要以上に交換される。
リューズ、チューブ、シリコンパッキンなどなど、
まだ使えるパーツなのに交換されるだけでなく費用もかかる。
結局は外装の修理も含めたら時計一本買えますね。

結局のところは時計で「良いところ取り」なんてできません。
「修理代金は安くしたいけど新品に戻すような修理をして欲しい。」
これは不可能な話。
あくまで時計を「維持」する上で必要な行いをするのが、
ウチのお店のような「修理」のやり方です。

時計は車やバイクと違って不具合が出てエンジンが掛からないや煙が出れば、
「直さなきゃ」と思いますが、
時計は見た目で分かる不具合はそんなに感じられないと思います。
だからオーバーホールを推奨してもほとんどの方はしません(笑)
でも時計を維持する上で、
そしてこれからも使う上でオーバーホールは「絶対に必要」なんです。

その時に「直せる時計」なのか「直せない時計」なのかは重要となります。
余程のことが無い限りウチで扱う時計は「直せます」。
ただし消耗パーツを交換するなどの場合はオーバーホールの基本料金より高くなります。
そしてウチで「直せない」時計は依頼されてもちゃんとお断りします。
技術的な問題ではなくパーツが今後手配できるできないなど、
様々な観点から修理をした後の「責任」を考えると売り上げのために修理は受け付けません。

ウチでの修理代金は2針、3針の機械式が\25,000+taxからとなります。
金額だけで言えば決して安くないのは重々承知の上ですが、
これは職人さんの工賃であり源泉です。
安くしろというのであれば他のお店に依頼するしかありません。
ですがやるなら「徹底的」に修理をするプライドを持っているのが、
ウチで提携している職人さん達です。





今回は数年前に買って頂いたロレックスの修理依頼。
内部のパーツ交換があり基本料金では上げられませんでしたが、
これでまた長く使えますね‼
現在作業中なので今月末頃に修理完了の予定。
早く時計をお渡しできる日が自分でも楽しみな1本です。

こうやって時計をオーバーホールをしてあげて「維持」することでこれからも使える。
車やバイク、カメラなどの機械ものと違ってずっと使える機械ものは、
実は「時計」くらい。
そう思うと今よりも大切にしてあげたくなりませんか?

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