意外と知られていない「機械」のお話

修理相談をしてくださった常連さん。

あ、今回もめちゃ長いですよ(笑)


「IWCのポルトギーゼとパネライ持っているんですが友人のブライトリングもそれぞれ修理代どれくらいですか?」

最近はありがたいことに現行品に近い年代の90年代以降や2000年代に製造された時計の修理相談が増えています。

 

ウチが提携している職人さんや修理専門会社がいくつかあると先日のブログでもお知らせしましたが、

その辺の年代の時計はバリバリ修理をやってきた老舗の修理専門会社に依頼しています。

かれこれ15年近くお付き合いさせて頂いており、

オーバーホールはもちろん外装の新品仕上げなど全行程において全幅の信頼を寄せています。

修理だけでなく経営相談さらには人生相談に乗ってくださり、

孫ぐらいの年齢の自分を相手にしてくださる社長の懐の深さには感謝しかありません。

 

さて話を戻すと…

もちろんポルトギーゼもパネライもブライトリングも喜んで修理を受け付けていますが、

受け付ける際に必ず伺うことがあります。

「それって自社製ムーヴメントですか?」

これを聞いて答えられるオーナーさんはほとんどいません。

どういうことか説明していきます。

 

多くの方が勘違いされているのが各ブランドの時計は内部のムーヴメントと外装を

「自社で一貫して全て製造している」と勘違いされている方が多い。

そういった自社一貫を貫いているブランドもありますが総じて「超」高級品。

それは設計、デザインだけでなく各パーツの製造も行わないといけないのでコストが非常にかかる。

そうすると販売価格は自ずと高くなります。

ではそうでないブランドは?

 

設計とデザインを各ブランドで行い自社工場で一部パーツを製造するパターンと、

全てのパーツを外注するパターンがあります。

詳しく書くと終わらないので今回はざっくりお話しすると、

IWCやパネライ、ブラントリングなどのスイスブランドはモデルによって

「ETA社」というムーヴメントを専門に製造する会社からムーヴメント仕入れます。

そこから自社工場で調整や組み立てを行うので、

ムーヴメントの製造コストが抑えられるメリットがある。

このETA社は現在オメガやハミルトン、ブレゲなどを要する巨大企業「スウォッチグループ」の傘下。

ここのムーヴメントの供給を受けているブランドは…

多分皆さんが知っているスイス製とされるブランドの9割はETAのムーヴメントです。

 

今回依頼いただいたIWCは修理に問題はない。

なぜならETAのムーヴメントをベースにしているから何かあってもパーツが手配できる可能性が高い。

パネライは上記の質問をしたのですがわからないそうなので、

後日お知り合いのも含め時計の写真を送ってもらうことにしました。

時計が分かればETAベースなのか自社製なのかわかるので、

その後の修理対応がスムーズになります。

 

では「自社製ムーヴメント」について。

これを知らない方は持っている時計必ず調べてください。

場合によっては手放した方がいいかもしれません…。

 

「自社製ムーヴメント」はその名の通り「各ブランドが自社で製造しているムーヴメント」です。

厳密に違う場合もありますが今回は細かいところは書きません。

例えばパネライで例を挙げると…

ものすごく分かりやすい判別で「3日以上のパワーリザーブがある場合はほとんど自社製」。

ETA(手巻きはユニタス)に比べてパワーリザーブが長いのが特徴で、

外装のデザインも1950ケースに裏スケなど旧型と一線を画すデザインです。

ここまではご存知なユーザーも多いと思います。

しかしこの先が問題です。

「その自社製ムーヴメントをメーカーで修理したら修理代はいくらですか?」

 

通常当店で修理を行う際の修理代金は

2針、3針機械式¥25,000+tax、

機械式クロノグラフ¥40,000+tax。

例え時計が大きくても修理代金は上記の通りです(笑)

ただし修理をする際は「パーツの手配ができるもの」に限ります。

「修理をする」ということは相応の「責任」があります。

なので自社製ムーヴメントは技術的な問題よりもパーツの手配ができるか否かでお断りすることもあります。

 

自社製ムーヴメントだと基本的にメーカーでしか「パーツの手配」ができません。

まぁ製造元ですから当たり前の話なのですが、

要は自社で設計しているから「代用もできない」場合が多い。

さらに近年の自社製は内部はもちろん外装も特殊構造のものが多い。

一世を風靡したフランクミューラーやロジェデュブイは一目瞭然と言えますね。

 

ちなみにネットで調べたらパネライのメーカー修理は

手巻き¥64,000、自動巻き¥71,500、クロノグラフ¥83,000

ここにパーツ代と消費税も加算されると思うので相当な金額です。

この金額を知って「高い」と思われるオーナーの方は、

今お持ちの時計を今後どうするのか検討されてもいいかもしれません。

新品で買ったりメーカー修理したから全て基本料金で修理ができると限りませんし、

少なくとも今後この金額を定期的に支払う必要があります。

さらに修理代金は変動があるのですが大幅に安くなることは考えにくい。

もう少し辛い現実を言えば「メーカー希望小売価格」という意味は、

メーカー側の決めた「言い値」とも受け取ることができます。

 

時計を買うときは気分が高揚して大事なことを忘れがちです。

「時計を持つ=修理をする」ことになるので、

購入する時計の修理代金はどのくらい掛かるものなのか知っておくことも大切です。

さらに修理はメーカーでしかできないのか?

修理は他に出しても大丈夫なのか?

時計は様々な要因が絡んでくる少し面倒なところもあります。

しかしそういった問題をクリアにしていくことも時計の楽しさ。

 

時計を選ぶときのポイントは「サイズを大事にしてください」とよくお伝えしていますが、

「メンテンナンス費用」も含めた予算で選ぶという事もお忘れなく。

あとよく聞かれる質問で

「他社でメンテナンスを受けるとメーカーで今後修理ができなくなる」

これは自分が知る限りほとんどありません。

ウチで修理してもメーカーで修理は受けられます。

 

もしそういったブランドがあるとしたら…

そんなブランドに魅力を感じますか?